お茶を淹れる時間が、暮らしの日常になっていきました。
お茶時間を楽しむための急須や茶杯が増えていくたびに、日々の中で楽しみと、同時に少しの不安も生まれました。
お気に入りの茶器たちをインテリアとして飾るように棚に置いていましたが、子どもが触れてしまうかもしれない、割れてしまうかもしれない——。
そんな心配が最近増えてきていました。
きっかけは「しまうこと」に対する違和感
“しまう”という行為は、本来「隠す」ことではなく「整える」こと。
お気に入りの茶器をただ片付けるのではなく、丁寧に取り出し、また丁寧に仕舞う——
子供も大切なおもちゃを箱に丁寧に仕舞います。大人も大切なアクセサリーなどは箱にしまったり。大切なものは箱に仕舞うのです。
その所作自体が心地よく、美しいものであってほしいと感じました。
そう考えたことが、この茶箱をつくる最初のきっかけです。
構造がデザインになる——あられ組の美しさ
茶箱を考えている時、友人の家に遊びに行く機会がありました。その家にあったのは、古い桐ダンスから制作したという箱でした。お裁縫道具などが入るその箱の角には「あられ組」と呼ばれる木工の伝統技法を用いられており、美しさと温かみを感じるものでした。
「あられ組」は、強度を高めるための構造でありながら、その規則的なかたちはシンプルな箱に小さなリズムを生み出します。
装飾を足すのではなく、構造そのものに美しさを見出す。
それが私が表現したいカタチでした。
最適なサイズを模索する
茶箱のデザインで、最も悩んだのは「サイズ」でした。
大きすぎれば存在が重くなり、置く場所を選んでしまう。
小さすぎれば、日々使う茶器が収まらない。
まず基準にしたのは、私自身が普段使っている茶器たち——急須、茶杯、茶海、茶さじなど。
それらが“無理なく”“気持ちよく”収まる寸法をひとつずつ検証していきました。
同時に、暮らしの中での置き場所も考えました。
私の場合、棚の上に置いても違和感がないことが条件でした。
空間の圧迫感を出さず、そっと馴染む大きさ。
箱が主張しすぎず、生活の流れに溶け込むことを重視しています。
そしてもうひとつ大切にしたのが、箱としてのプロポーション。
縦横高さの比率によって、佇まいは驚くほど変わります。
見える部分だけでなく、「暮らしの中でどう振る舞うか」を軸にしたサイズ。
この箱の静かな存在感は、そんな小さな積み重ねから生まれています。
整えるための仕切り、使うための蓋
中には、茶器を心地よく収めるための仕切りを設けました。
急須や茶杯、茶さじなど、大小さまざまな形を整えて収納できます。
また、蓋の内側にはメラミン板を採用し、裏返すことでトレイ(盆)としても使えるようにしました。
しまうことと、使うこと。その間をやさしくつなぐ機能です。
暮らしの風景に溶け込むように
外観は、できるだけ主張を抑えたかたちに。
家具や空間の中で、そっと呼吸を合わせるように佇みます。
お茶を淹れる時間のそばに置いても違和感がなく、使う人の生活に寄り添う存在でありたいと思いました。
箱でありながら、空間を整える“ひとつの景色”になるように。
そんな願いを込めています。


お気に入りの茶器
